徒花と蝶
ショックだった。
まるで、『お前には会いたくない』『忘れるまで帰ってくるな』『田舎で忘れてこい』そう言われているようで。
結局、私はそんなものだったんだと。
けれど、今ならわかる。
「…もう、私は間違えた愛に惑わされたりしない。冴島さんとはきっぱりと別れることを約束する。…本当に、ごめんなさい」
『ではまた休み明けにお会いしましょう。…失礼します』
私はそう言って、冴島さんとの通話を切った。
これで、―――終われた。
終わることができた。
私は何かが胸元に落ちるのが分かった。
…じんわりと広がって、ブラウスの色が変わる。
…涙が、落ちていた。