君×私×彼
あと少しで終わるところに
美紗希がやってきた
「あれ、花奈何してるの?」
言いながら私の机まで来る
思わぬ人物の登場に驚く
「美紗希こそまだ帰ってなかったの?」
美紗希は部活に入ってないし
放課後にバイトがある日もあるから
てっきり帰ったんだと思っていた
「帰る途中で部活の勧誘に捕まってさ~」
勧誘?
でもそれ一年生にじゃないの?
「二年生なのに?」
問いかけると、なぜか美紗希は照れた
「最初、一年生と間違われて…」
その言葉を聴いた瞬間
私は笑っていた
「えっ?それ本当っ?」
笑いながら聞き返すと
余計照れていた
何か、可哀想なことしたかも…
って思いながらも笑っていた
「あーもう!私の話終わり!」
美紗希は自分の話に終止符をつけた
「花奈は何してるの?」
笑いをこらえながら答えた
「えっと…、先生の手伝い…?」
で、合ってるよね?
「先生ってば、なんでこんなの女子にやらすかな~」
まぁ、確かに…
でも委員だしね
「先生って、学校中の人気者みたいになってるけど、正直ちょっとなんかな~って思うんだよね」
自分の気持ちを言い当てられたようで
少しびくっとした
先生に対するこの変な感情が
美紗希にもあるの?
自分の気持ちの答えが見つかりそうな
そんな予感がして聞き返した
「え?それってどういうこと?」
「だってさ、柳田先生は私達の担任じゃん?自慢できる先生だけど、もうちょっとこのクラスにいてほしいっていうか…。特別扱いしてほしいっていうか…」
うーん、と言って悩みだす
しばらくしてから
いい言葉が見つかったのか
はっと顔をこっちに向けた
「もっとこのクラスを見てほしい!って感じ?」
やっと見つかった言葉のようだった
だけど
疑問形ってことは
確信は持てないっていうことなんだと思う
「って、これじゃまるで恋してるみたいじゃん!」
彼女か!とツッコんで笑っていた
冗談だってもちろん分かる
だけど私は笑えなかった
つまり
嫌いだって思ってたのは
先生が学校の皆に優しいから?
私達を特別にしてほしいって
わがままを持っていたから?
そんな…
まさかね
「花奈?」
名前を呼ばれて我に返る
「今の冗談だからね?先生好きとかありえないし!」
先生としては好きだけど
と、付け足した
「そうだよね」
言ってからも
自分に言い聞かせるように
胸の中で何度もその言葉を繰り返した