君×私×彼
HRの終了を知らせるチャイムが鳴ると
すぐに教室を出た
行く場所なんてない
歩いて歩いて、廊下の突き当たりまで来て
そして階段を降りて保健室の前で止まった
私が泣いてたなんて
誰も気づいてないよね?
一旦、冷静になろう
私は深呼吸を繰り返しやった
落ち着くまで何回も…
そこで保健室のドアが開いた
「あら、体育祭の時の…」
部屋から出てきた保健の先生は
どうやら私のことを覚えているらしい
あんな大惨事を起こした人物を
覚えてない方もおかしいけど…
「おはようございます…」
たどたどしく挨拶する私を
先生は不思議がりながらも保健室へ招き入れた
「怪我の具合はどう?…って、その様子じゃ大丈夫そうね」
保健の先生はお母さんのような
不思議なあたたかみを放って話す
これは全国共通かもしれない
年齢も私のお母さんと同じぐらいだと思う
それか少し上
「はい、普通に歩けるようになりました」
そう言うと
「良かったわね」と返した
「そういえば、捻挫もしてたのよね?湿布の場所、よく分かったわね」
「え…?」
「ちょうど湿布きれてて、予備のものを結構奥にしまっておいたから、見つけにくかったでしょ?」
そうか、だから先生は
あんなに探していたんだ…
それは…見つからなくて当然だね
「先生が見つけてくれました」
私は当時のことを話した
湿布を連呼しならがら探して
見つかると喜んでいた先生のことを
先生はクスクス笑いながら聞いてくれた
話していると
ちょっと気分が楽になった
保健の先生パワーかな…?
「柳田先生って、本当元気で明るい先生よね。良い担任に恵まれたんじゃない?」
確かに、良い担任だと思う
だけど、前に美紗希が言ってたように
他のクラスの生徒にも人気っていうのは
ちょっと寂しいような気がした
今は、寂しいだけじゃないって
はっきりと分かる
私、他の子達に
嫉妬してたんだ
だからあんな意地になってた
嫌い嫌いって言ってたけど
本当は違った
愛情の裏返しってやつ?
きっとそれ
「そろそろ授業開始のチャイムが鳴るわよ」
その先生の言葉で
私は教室に戻ることにした
とりあえず、今日一日は
平然と過ごそう
前の私を演じきってやり過ごすんだ
そう心に決め
また教室のドアを開けた