【短】動き出した世界
突然のことで声も出なかったが、私は真っ直ぐに先生の顔を見る。


「もう、帰ります」


静かにそい言うと先生は私の表情を伺いながら
こう言った。


「元気ないけど、何かあった?」

先程、振られたことが脳裏に残る。

しばらくして私はようやく先生の問いに答えた。


「振られたんです」

先生は驚きもせずに
ただ突っ立って、言葉を続ける。

「彼にもいろいろあったのかもしれない、受験生だし、恋愛よりも勉強を取ったんだろう」


「でも!」

言葉を言いかけたところで私は先生に帰るよう指示された。
時計を見ると下校時刻を過ぎていた。

納得がいかないまま、私は玄関まで歩きだす。
柴田先生が鍵を開けると言って私の前を歩いていた。
私は普段と同じように
歩くのだが、先生の後ろをついて歩くということは初めてだ。

その間も2人は会話をしなかった。
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