【短】動き出した世界
「さてと、じゃあ気をつけて帰ってください」


先生は玄関のドアをそう言って開けてくれた。

しかし、私の足は根が生えたように動かなかった。
動かなかったというより、動こうとしなかったのだろう。
何か言わなければいけない。


「先生は優しいんですね」


「そうでもないと思います」

そう言って先生は静かに苦笑した。
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