サマー・タイム
『どうしたんだい?』
おばあちゃんが、麦茶とスイカを持ってきて、隣に座る。

「ううん。どうもしないよ。」
『そうかい。』
おばあちゃんは、詳しく聞かず、優しく隣に座ってくれる。

『夏妃ちゃん。今年は高校生最後の夏だね。』
「うん。でも、ほとんど受験勉強でつぶれちゃったけどね。」
ふふっと、笑いながら言う。
『思い出沢山作らないとだね~。』
カラカラっと、氷の音を立てる。

『今年も、ヒマワリが立派に育って良かったわ~。これはおじいちゃんとの約束だからね。』
「そうなんだ。どんな約束したの?」

まだ、話してなかったねと。おばあちゃんは、ヒマワリを見つめながら、大事そうに話ししてくれた。

おばあちゃんと、おじいちゃんが出会った頃の思い出。
2人の幸せの象徴がヒマワリだったこと。
『おじいちゃんがね、病気が見つかったとき。自分より早くこの世を去ることになるからって、私が寂しくないように。ってヒマワリの種をくれてね。自分の変わりに見守ってくれることを願って。』

「知らなかった。おじいちゃん優しいね。居なくなっても、おばあちゃんのこと考えてくれて…。うらやましいなぁ。」

『スゴク、優しい人だったからね。』
何か、胸がきゅうっとしめつけられて、苦しくなる。

『夏妃ちゃん、辛そうな顔してる。』
背中を、そっとさすってくれる。

「おばあちゃんの話聞いてたら、アキとのこと思い出してた。会いたくなっちゃった。」
『夏妃ちゃんにとって、その人は、スゴク大切な人なんだね。』
うん、と頷く。

「いつでも会えると思ってた。当たり前な事なんてないのに。」
そうだね。って優しく、おばちゃんはずっと隣に居てくれた。
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