愛しい君へ
…す、好きじゃない?



「ま、待って愛。何言ってんだ?」


頭がついていかない


「…っぐす…、だ、だって雛さんと付き合ってるんでしょ?」


「は、はぁぁぁぁぁあ!?」


俺の呆れ声が廊下に響いた


「ちょ、ちょっと待てよ。付き合ってる?誰と誰が?」


慌てる俺を見て、愛は意味が分からないと言わんばかりの顔をしてくる


「…えっ、三谷くんと雛さん…。」


「ちょ、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!」


俺が大声で愛の言葉を遮る


「何言ってんだよ。」


「へっ?だ、だって、階段の所で抱き合ってたじゃない。」


「あれは、階段から落ちた時に雛を庇って頭打ったから、それを心配した雛が泣いてたのを慰めてただけだぜ。」


「俺、雛とは付き合ってないけど?」


「…はっ?」


「雛は斗真の彼女だけど…。」


その言葉を聞いた瞬間愛の顔が青ざめる


「はっ、えっ、ほんとに!?」


慌てる愛に俺は頷く


「…う、嘘…。」


「ほんと。」


ハッキリと答えると愛は崩れるように座り込む


「あ、愛!?」


驚いて俺も愛の前にしゃがみ込んだ


「…嘘、だったんだ。」


目の前の愛は微笑んでいてドキッとした


「…愛こそ。南と付き合ってたんじゃないのか?」


「…はぁ?」


いきなりいつもの愛に戻って、俺は少し驚く


「…南?」


眉間に皺を寄せながら尋ねてくる


「ああ。二年の南祐司。」

俺が名前を言った瞬間、ああ、と呟く


「別に付き合ってないけど。」


「は…?」


真顔で言う愛が嘘言っているように見えなくて、俺は南に騙されたことに気づく

「や、やられたー!!」



くそ!


南のやつめ!


堂々と嘘を吐きやがって!!


「南先輩には告白されたけど、好きな人がいるからって断ったよ?」


「…はぁ、まじかよ――…お!?」


い、今何て言った?


いや、てか、さっきも耳を疑うようなこと言ってたよな?
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