愛しい君へ
「あーいー!!」


俺は前を歩く愛を追いかける


愛は嫌そうな顔をしながら振り向く


嫌な顔はするくせに、絶対に無視したりしない


愛はやっぱり優しい奴


「何?」


「あー!やっぱりな!」


眉間に皺を寄せる愛をよそに俺は愛の手元に注目する

「お前また他人の仕事を引き受けたんだろ!」


愛が持っていた教材らしきものを俺は片手で奪う


「ちょっと、返してよ。」

伸ばしてきた愛の手を俺は空いている手で掴む


「愛は優しすぎ!少しはその優しさを自分のために使えよな。」


掴まれた手を必死に離そうとブンブンと手を振る愛


だけど、男の俺に女の愛の力がかなうわけもなく、諦めたように手を止める


「…別にいいの。あたしがしたくてしてるんだから。」


愛は顔を下に向けながら呟いた
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