愛しい君へ
「…あ、愛…。」




違う!って誤解を解きたかったのに俺の口から出た言葉は違うものだった





「今日も可愛いね。」


「し、慎平!?」


俺の予想外の言葉に雛が目を見開く



…な、



何言ってんだ俺―――…!


ち、違うんだっ!愛!!


これは誤解で…っ!



言いたいのに焦れば焦るほど口が開かなくなる



目の前の愛は眉間に皺を寄せていて、何も言わない


俺の腕の中にいる雛が何かを言おうと顔をあげた瞬間


「…その体勢で何言っても説得力ないから。」


冷たく言い放ち、けど、いつもと変わらない態度で愛は俺達の横を通り過ぎ、階段を登っていった



しばらく呆然としていた俺達を階段の上から斗真が見下ろす


「…何してんの、お前ら。」


「…ふふ、何に見えます?」


「はっ…?抱き合ってるように見えるけど?」


「…ですよねー、ですよねー。」



俺は若干開き直りながら答える


「てか、何で2人してそんなとこにぼーっと座ってんの?」


斗真が階段を下りながら尋ねてくる


「…作戦するつもりなかったのに実行してしまった…。」

「…作戦?」


意味が分からないとでも言わんばかりの顔をしながら、斗真が首を傾げる



「…いっさい動じませんでした…。」


「…ごめん…慎平…。」



肩をおとす俺と謝る雛を交互に見ながら、斗真の口からは、はっ?という言葉がでてきた
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