a・ri・ki・ta・riな雨の物語
本気で好きなひと
 相変わらず、降り続く雨の糸
 カレンダーは、気がつけば7月に変わって
いた。
 湿気を含んだ夏の温度が、日に日に上昇
を続けている。
 暑い暑い夏が、もうすぐ始る。
 地下鉄から、会社に続く道で、
 「おっはよう」
 後ろから、声かけられて振り返ると、香奈
がいた。
 相変わらず、香奈は元気で、赤い傘から、
覗かせた笑顔にホッとする。
 「おはよう」
 私達は、会社までの少しの距離を、いつも
のように並んで歩いた。
 「美和、前田くんと相当噂になってるね。
いっそこのまま、付合っちゃえば」
 いたずらっぽい目で、香奈が笑った。
 「森田さんと付合うんじゃない」
 私は、そっけなく答えた。
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