a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 公平といったら相変わらず、スポーツ新聞
片手にノーテンキに出社してきた。
 単純な奴だから、ホークスが調子よくて、
ご満悦の様子だった。
 

 「なんだこれは!先方からクレームの電話
が入ってるぞ」
 佐野主任の声がオフィス中に響いた。
 主任のことだから、またおおげさななんて
思ったけど、事態は深刻だった。
大手お得意様から、追加発注した品物がぜ
んぜん届かないというクレームだった。
 先方はカンカンに怒っているという。どう
やら、取引を止めたいとまで言ってきている
らしいのだ。
 大手の管轄は森田さんで、どうやら、森田
さんの単純なオーダーミスだったらしく、冷
静さを装っても、血の気の引いた顔をしてい
た。
 
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