a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 一瞬、目が合ったけど、森田さんの声にさ
えぎられて、そのまま無視された形になって
しまった。
 それから、公平の行動予定表を示すホワイ
トボードには、外出の2文字が、冷たく記さ
れて、帰社予定は、×になっていた。
 今日は、戻ってこない・・・
 このままの状態で、ひとこともしゃべれな
いまま、今度は、公平の携帯の電源が切ら
れてしまった。
 残業を片付けた後、屋上に出て、崩れ落ち
た。
 空には、昨日と変わらない月がポツンと夜
空を飾っていた。
 お月様の溜息が聞こえてきそうな青い夜
 ひび割れた心に、月のやわらかな光が、や
さしくかった。
 「何してんの?」
 「ぎょっ!」
 突然の声にびっくりして声をあげた
 
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