a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 薄ぐらい屋上を、そっと見まわしてみたら
すぐ先に香奈が、手にたばこを持ったまま立
っていた。
 「香奈・・・?うそっ香奈ってたばこ吸う
の?」
 「たまにね。東京にいる頃、淋しかったり
イライラしたりしたら、吸ってたんだ」
 「香奈・・・」
 香奈の弱さが愛しく思えた。
 香奈にも、そういう部分あったんだよね
 私達の未来はどうなってるのだろう?
 私は、立ちあがって、香奈の横の手すりを
握った。
 「香奈もいろいろあるんだ。ごめんね私、
自分のことで、いっぱいいっぱいで」
 「ばかね、私は今、充実してるわよ。それ
より美和はどうするの?前田くんのこと」   
 香奈の出したたばこの煙が、すっとビルの
谷間に消えていった。
 「もう、私達だめかも・・・」

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