a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 そう言いながら、香奈に思いっきり背中を
叩かれた。
 「げほっ」
 私だって少しは、成長してるんだったば
 なんでもない月夜の晩。
 青い青い夜に、大切なものを拾った。
 「香奈、私は、波乱万丈じゃなく、ごく普
通に生活してるって思ってたけど、その普通
に生きるってことも、実は大変なことなのか
もしれないね。だけど、普通って響きだけで
たいしたことないみたいに思えるから、不思
議だね」
 唐突な私の言葉に、香奈は、きょとんとし
ていた。
 普通にも幾とおりの生き方がある。
 根拠は、ないけれど、普通に生きるって、
実は、奥が深い。
 そして、私は、お月様の溜息に、そっと背
を向けた。
 

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