a・ri・ki・ta・riな雨の物語
いてもたってもいられなくて、ここに来てし
まったんだ。香奈の携帯かけてもつながらな
いし、会社に電話したら、屋上にいるらしい
って言われて、屋上に登ろうとしたら、警備
員に止められて、しかたないから、隣りのビ
ルの非情階段登ってきた。ちきしょー疲れた
ぜぇ」
 汗だくの町田くんは、こう説明したあと、
息を整え出して、香奈の正面に立った。
 そして、ありったけの力と心を込めて、
 「かなーっ!すきだーっ!待ってるから、
帰ってくるの待ってるから、オレのところに
戻ってきてほしぃーっ」
 町田くんが、香奈に向かって、そう叫んで
いる。
 ビルを飛び越えて、力強く降り注いでくる
町田くんの告白は、香奈に充分届いている
はず。
 その証拠に香奈の目から、涙が、こぼれ落
ちていた。
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