a・ri・ki・ta・riな雨の物語
つじゃない。
こんなにぎりぎりで、あったまにきていると
 「これは、私がやっとくわ。だから早く行っ
て。今日は、前田くん本社で、1日中会議に
出てるはずよ」
 そう言うと、森田さんは、私の手から、書類
を、抜き取って行った。
 予期せぬ出来事に、ボーゼンとして、お礼
さえ言えなかった。
 三島課長も早くって促してくれた。
 人のやさしさに触れた時、心が温かくなっ
て、またひとつ勇気がわいてくる。
 いろんな思いを感じて、会社を出た。
 恋が、人を大人にして、強くしていってくれ
るなら、きっと私も、前より強くなったはず。
 だけど、公平が側にいてくるなら、もっとも
っと、強く輝けるはず。だから、今度こそ、側
にいて。
 せみしぐれ、夏草の揺れる音、ほおづきの実
 もうすぐ、季節が変わる。
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