a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 すごくやさしい言葉だった。
 ずっと、溜息の海を、泳いぎ続けた人魚は
ようやく丘に上がることが出来た。
 香奈は、大丈夫。
 
 せっかくいいこと言った公平は、この後、
お醤油と酢間違ってかけちゃうし、塩の容器
持ち損なって、山盛りに料理にかける失態を
しでかして、お店の人が、怪訝そうな顔で、
通り過ぎて行った。
 そういうとこも、昔から変わらない。
 おおボケかましてくれるから、私達は、お
かしくて、いつの間にか心から笑っていた。
 香奈の隣りで、町田くんも気を使って盛り
上げてくれてた。
 久々に会う町田くんは、地元の大学を出た
後、お父さんの経営している木工所を継ぐた
めに、今は、別のとこで、修行しているとの
ことだった。
 短髪に日焼けした顔。


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