a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 朝のラッシュ時の人の波をさえぎって立た
ずんでいる私に、あいつも気づいて、私達は
きつねにつままれたみたいに、ポカンと見つ
めあったまま立ちつくしていた。

 ブー

 出発のベルがホームを包みこむ。
 
 出会いは、いつも突然だから・・・
 
 私は、駆け込み乗車の人の波に押されて
 「きゃーっ!」
 あいつにしがみつかざるおえなくって
 なぜか高校の頃恋をして、想いが叶わな
かった公平の腕の中で支えられて立っていた。
 ほんの数分前までこいつのこと、なつかし
んでいたのに。
 「こっ公平、何でここにいるの?」
 「おまえこそ何でだよ」

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