笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


私はドアの前まで来て、そのままそのドアをそっと開く。


すると。


「誕生日、おめでとう」


私の瞳に飛び込んできたのは、にこやかに笑う父親の姿。


そして、小さな正方形の箱。


「父さんと母さんからのプレゼントだ」


父親は私の手に触れ、そのまま手のひらを広げさせると、その上にそっと小さな箱を乗せた。


――また今年も、誕生日プレゼントをもらった。

< 109 / 463 >

この作品をシェア

pagetop