笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


私は笑うことができないから、笑わなくても不自由がなく生きていくこと、それが本当の幸せで。


笑えなくても自由に生きていくこと、笑えなくても素直に生きていくこと、それが本当の幸せを感じる瞬間なのだから。


そんなこと、ずっと前から分かっていたけど。


でも。


このネックレスに、ほんの少しだけ期待を込めてみようか。


この小さな紙に書かれたことが、本当かどうか。


――私の本当の幸せの理由を、もっと強く感じられるかどうか。


自分で体感すれば、きっと分かるはずだ。


私は箱と紙をテーブルの上に置くと、ネックレスだけを持って鏡の前へ移動した。


鏡に映った自分と何秒か向き合って、ネックレスを首の周りに通す。

< 119 / 463 >

この作品をシェア

pagetop