笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


慣れない作業にぎこちなく動きながらも、ネックレスを付けた自分の姿をただ見つめてみる。


自分では、違和感しか、感じない。


だけど。


胸元にストーンが光るネックレスが鏡に反射し、私にウィンクしたように見えた。


同時に、ヴー…と部屋に響いた、バイブ音。


手に取ったスマートフォンの画面には、少ない文字。


【 俺は依美の名前が好きだけどな 】


心臓がふわりと浮くような、この感覚。


7月7日。


今年の七夕は、星ではない何かに、願いを込めた気がした。


そう。


私の中ではじめて生まれた、その願いを。



< 120 / 463 >

この作品をシェア

pagetop