笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
3 ◇ 秘密
「依梨が熱を出すなんて珍しいわね」
母親が、体温計を見て呟いた。
「うー…寒い…」
「寒いってことはまだ熱が上がる証拠よ」
今年の誕生日はそれから何事もなく過ぎて行き、今はその夜から一夜明けた、朝の7時過ぎ。
いつも決まった時間に起きる私が変わらず登校準備をしていたとき、隣の部屋から全く物音がしないことに違和感を覚え、隣、りぃの部屋まで様子を見に行った。
するとりぃは布団に包まって咳き込んでいて、まさかと思って私が額に手を当てると、その額は物凄い熱さだったのだ。
そして今まさに、その途中で入ってきた母親にりぃが体温をはからされたところだった。