笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


母親の持つ体温計を覗いてみると、そこにはデジタルの数字が“38.1”と並んでいて。


38度の熱なんて、比較的健康体な私の家系ではなかなか出ることがないのに、その熱を出したのがりぃだから更に驚きだ。


そしてりぃは真冬にシャツ一枚でいても風邪を引くことなんてまずないのに、こんな夏に熱を出すものだから、思わず疑ってしまうほどである。


「ゴホッゴホッ」


あまりの驚きで私がりぃを見つめていると、りぃは苦しそうに咳き込んだ。


そんなりぃを見た母親もまた、心配そうに口を開く。


「これ以上熱が上がると厄介ね、学校に休む連絡しておくから早いうちに病院に行くわよ、依梨」


そう言った母親は、きっと学校に連絡をするのだろう、りぃの部屋を出て行った。

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