笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「みぃー…私は大丈夫だから、準備して、遅刻しちゃう」
りぃと目が合うと、苦しそうにしながらも私にそう伝えてくる。
こんなときまで私を気遣ってくれるりぃは、本当に優しかった。
私は遅刻したことがないし、そもそも遅刻をしそうになるのは好きじゃない。
ギリギリになって焦るのは嫌いで、少し早めに学校に到着していたいタイプの人間なのだ。
そのことを誰よりも知っているのはりぃだから、そうやって言葉をかけてくれたのだろう。
りぃが苦しいときでさえ、助けられるのはいつも私で。
私がりぃを助けられたことなんて、あっただろうか――
「りぃ、病院行って、安静にしてなよ」
「うん…ありがと」
私は母親が戻ってくるまでりぃの様子を見たあと、そっと家を出た。