笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


――気が付けば、ここまで来ていた。


相変わらず中の様子が見えないドアに、何も書かれていない無記のプレート。


一見、ただ怪しいだけの部屋。


だけど。


昨日このドアを開けた私が目にしたのは、怪しさとは正反対の世界で。


きっと、今日もその世界をこの目で確かめに来たんだ。


でもダメだ、もうすぐホームルームが始まる。


ここに入れば、私は時間を忘れてしまう。


ここに入れば、出ることができなくなってしまう。


私は――すべての期待を裏切られないから。

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