笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


甘い香りが、私の鼻をかすめて。


もう、戻れない。


「依美、今日も来たんだな」


奏の声は優しくて、笑顔が本当によく似合って。


こんな私を否定もせずに、受け入れてくれて。


きっと、私はずっと会いたかった。


この人に、彼に、奏に、ずっと会いたかった。


昨日ここを出てからずっと、奏に会いたかったんだ。

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