笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
ここに来るのは2度目で、まだ知らないことのほうが多い。
それに奏についてもまだほとんど何も知らないし、私は不思議な世界にただ腰掛けることしかできない。
昨日も座ったこの椅子は、やっぱりどこか温かく感じる。
私は奏の出してくれた紅茶の表面を見ながら、なんとなく会話を始めた。
「…奏ばっかり、私のこと知ってる気がする」
そんなことはないだろう、分かっているけど。
自分のことを人に話すことなんてないから、少し教えただけで、何か自分の物凄い秘密を知られているような気になる。