笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「んー、でもまだまだ依美のこと知らねぇよ」
奏は笑って、一口紅茶を飲む。
テーブルを挟んで、私の前に座る奏。
昨日と変わらず制服姿で、髪型も同じように軽くセットされている。
本当に、何度見ても綺麗な人だと思った。
そんな私の視線に気がついた奏が、目を合わせて口を開く。
「俺のことも、言ったほうがいいよな」
カチャン、と小さな音が響く。
奏が、紅茶のカップを皿にのせた音だ。