笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
普段なら大きな音に感じないその音が、ここでは凄く存在感のある音に聞こえる。
私を見た奏の瞳は、透き通っていて。
その瞳に吸い寄せられるように、頷いた。
「…うん、知りたい」
感情の表現が苦手な私でも、言葉を表現することはできる。
奏について、知りたい。
今素直に感じた思いを言葉に乗せて、奏のもとへ届ける。
私はもう紅茶の表面なんて見る必要がないほどに、気が付けばただじっと奏を見つめていた。
だけど今度は奏が目線を外して、さっきまでの私のように、紅茶の表面を見つめる。