笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


自分の意思じゃないと気が付いて、悔しかった。


器用に生きられなくて、でもどうすればいいかなんて分からなくて。


結局いろいろな何かに押しつぶされて、心が悲鳴をあげて、それさえにも気が付けなくて。


悔しかった。


「依美」


奏に抱きしめられたままの私。


私を抱きしめたままの奏。


名前を呼ばれて、心臓も、脳内も、耳も、身体中の全てを奏の声に鷲掴みにされる感覚がして。


そっと、奏の声が響く。


「優等生、やめちゃえよ」


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