笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「依美、それつけてくれてたのね」
晩ご飯のとき、私がいつも通り母親の作った料理を口に運んでいると、そう言って母親が私の胸元を見た。
「あ…ネックレス、ありがとう」
私は料理を食べながら、母親と父親に軽く目を合わせる。
「ふふ、嬉しいわ、依美に似合うと思って買ったのよ」
その母親の言葉でネックレスの存在に気がついた父親も、また同じようにネックレスを見てくる。
「気に入ってくれたみたいで、よかったな」
父親の笑顔は、相変わらず真っ直ぐだった。