笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


「いいよ、別に見なくて」


私は今日も教室には向かわず、そのまま奏のいる部屋に向かうつもりでいる。


私やりぃの教室があるのは奏の部屋より手前側だから、私が奏の部屋まで途中でりぃとは別れることになる。


りぃには奏のことを話したけど、奏と出会った部屋のことは話していないし、きっとその存在も知らない。


私が奏とはじめて出会って部屋を出たとき、りぃの姿を確認して思わずしゃがみこんでしまった場所はあの部屋の前だったけど、きっとりぃはあの場所で奏に出会ったとは知らないだろう。


だからりぃが私のあとを付いてくるようなことをしなければ、部屋の存在はそのまま知られないけど。


反対に付いてくるようなことをすれば、奏も部屋の場所も部屋の中も、全て知られてしまうだろう。

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