笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


廊下で喋っていた生徒たちが、ゾロゾロと教室に入っていく姿。


そんな中、廊下にいたまま、教室に入ろうとしない私たち。


誰かに見られて、告げ口されるかもしれない。


教師に見られて、怒られるかもしれない。


そんな緊張感の中、私は彼に――手を握られて。


「俺はお前と依梨、似てると思う…正反対なんかじゃねぇよ、どっちもそれぞれがちゃんといいやつじゃん」


――その言葉を、送ってくれた。


私とりぃは、正反対で。


共通して優れた部分なんて、ないと思っていたのに。


りぃの方が可愛いし、魅力的だし、明るいのに。


奏は、私たちを比較なんてしなかった。

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