笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
私たちをひとりずつ、ひとりの人間として、見てくれた。
そうか。
りぃにあって私にはないものを数えてそれを伝えなくたって、私を受け入れてくれる人だっている。
“私にしかない”何かを数えてくれる人だっている。
私を、私として――向き合ってくれる人だっている。
「行こうぜ」
秘密の場所まで、走り出した。
前を走る彼の髪の毛が、風に揺れる。
光を通すその透明感のある髪の毛は、本当に素直で。
ドキドキして、ハラハラして、苦しかった。
ここはもうきっと、異空間なんかじゃない。
新しい、“私の空間”だった――