笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
私と奏はそれからいつもの部屋に入り、お互いいつもの椅子に腰掛けた。
少し慣れてはきたものの、やはりここは不思議な空間のまま。
私はこの部屋の中央にある、大きい木に視線を動かす。
この大きな木。
なんの木かは未だに分かっていないけど、とにかく誇らしくて、格好良くて、素敵だ。
「その木、俺もなんの木なのか知らねぇんだよ」
奏が笑って、言う。
私の視線に気がついて、木についての話で声をかけてくれたのだろう。