笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
でも、奏が知らないなんて、どういうことだろう。
だってここは奏の部屋なのに。
「奏も知らないの?じゃあ誰が知ってるの」
私は木を見ていた視線を奏へと移動させると、疑問をそのまま奏に投げかける。
すると奏はまた笑って、一度その木へ目をやった。
――その表情は、笑顔だけど、笑顔ではなかった。
切ないような、悲しいような、その笑顔。
きっと普通に見れば笑顔なのだと思う。