笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


でもその感情よりも、解け始めたこの部屋の謎を聞くのに夢中になって、私は奏の瞳をただじっと見つめる。


「彩菜は2年前に卒業していったけど、ここはそのときの部屋のままにしてるから、この木も家具も、ティーポットも、全部アイツの趣味」


――そうだったのか。


だから奏はこの木について何も知らないのか。


ここの家具は淡くてパステル調のものばかりだったから、明らかに奏の趣味ではないと思っていたし。


ティーポットの形なんて、ずいぶん女らしくて、ずいぶん上品だと思っていた。


私は納得して、少しづつこの部屋のものたちを見渡す。


ここに残されたのは、――その“彩菜”さんのものだったのか。


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