笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
やっぱり、ザワザワした。
だけど。
「俺は、彩菜のことが好きだった」
奏の声は、悲しかったから。
胸の奥で感じたザワつきと、それ以上の確かな感情は、どこかへ消え去っていった。
そしてその言葉と同時に、奏はその“笑顔”を浮かべて。
奏の想いが、そこに溢れ出していた。
私は彩菜さんじゃない、彩菜さんのことを知らない。
でもその想いは、奏のすべてから苦しいほど伝わった。