笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


やっぱり、ザワザワした。


だけど。


「俺は、彩菜のことが好きだった」


奏の声は、悲しかったから。


胸の奥で感じたザワつきと、それ以上の確かな感情は、どこかへ消え去っていった。


そしてその言葉と同時に、奏はその“笑顔”を浮かべて。


奏の想いが、そこに溢れ出していた。


私は彩菜さんじゃない、彩菜さんのことを知らない。


でもその想いは、奏のすべてから苦しいほど伝わった。

< 239 / 463 >

この作品をシェア

pagetop