笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
私が言えるようなことなんて、何もなかったから。
何も言わず、そのまま奏の話を聞き続ける。
「でも俺は大切な人は作らなかった、守れねぇから」
奏は、自分の髪の毛を手のひらでかき混ぜるようにして。
そう言って、笑った。
もう、とにかく辛かった、奏の笑顔が、苦しくて。
私は思わず、目をそらしてしまった。
でも今日はまだ出されていないから、紅茶の表面にその視線を逃がすことはできなくて。