笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
私は何となく、テーブルの上に置かれていた小さな観葉植物を、見ていた。
「もちろん今はもう、彩菜のことは好きじゃない」
そんな私にも構わず、奏は話を続ける。
その声だけ聞くと、いつもと変わらない、いつもと同じ奏の声で。
苦しい笑顔を浮かべていることなんて、きっと周りには気がついてもらえない。
苦しい話をしていることなんて、きっと気がついてもらえないんだ――
「話がそれたけど、ここは元々彩菜の部屋だった、ってことな」
奏の話は、それで終わった。