笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


――笑顔で、断った。


そしてそれだけ言って向き直ると、再び本の中の文字へと目を通す。


「何だよその笑顔…」


男子生徒たちは誘いを断った俺に不満そうにしながらも、仕方ないなという表情で、サッカーボールと一緒にゾロゾロと教室を出て行った。


内心、誘ってくるなよ、と思った。


だけど――俺には、マイナスな感情を表現する力がない。


悲しみも、怒りも、戸惑いも。


心の中で感じていても、それを表に出すことはできない。


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