笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
タイトルは“涙”――。
ただ一文字、“涙”と書かれた本だった。
その文字は表紙の上の方に右寄せに書かれていて、その下には人間の手のひらが、水をすくい上げたようなイラストが描かれていた。
涙。
どういう風に流れるのだろう。
流れたとき、何を思うのだろう。
生まれてから一度も涙を流したことのない俺の、きっと永遠の疑問だ。
俺はその本をそっと開いた。
最初のページにも、“涙”とだけ書かれている。