笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


そして。


「あ…誰かいた…」


彼女は俺に気がつくと、その視線を床に落とし、まるでその涙を隠すように俯いた。


そしてそのまま、その場にしゃがみこんでしまったのだ。


俺は“涙”の本のことも忘れて、無意識にその本をあった場所にしまうと、彼女にそっと近づく。


人の、涙。


見ることはもちろんたくさんあった。


実際に見ることも、テレビや映画で見ることも。


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