笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


だけどどれも俺にはないもので、その存在の想像すらすることができなかった。


彼女は近づく俺に気がつかず、しゃがみこんだまま、俯いたままだ。


俺は彼女の2歩前くらいの位置で、そっとしゃがみこんだ。


そこで俺にようやく気がついた彼女は、ゆっくり顔を上げる。


「…1年生?」


その表情、その瞳、その声が。


――俺の心臓を、大きく、高鳴らせた。

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