笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
泣けなくて、こんな笑顔で、ごめん。
俺は彼氏でも親友でもない、ただの頼りない後輩だった。
彩菜の目には、本当に子供に映っていたかもしれない。
だけど。
彩菜のことが、本当に好きだった。
ありがとう、一緒にいてくれて。
ありがとう、優しさをくれて。
彩菜の笑顔も泣き顔も、怒った顔も。
一緒に飲んだ紅茶の味も、一緒に食べたお菓子の味も。
彩菜を好きだったという、その事実も。
俺はきっと、忘れないから――