笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


そしてこの部屋で一人で過ごすことにも、もう慣れた。


彩菜がいた頃と、何も変わらないこの部屋。


木も芝生も、家具も、ティーポットも。


俺の好みに変えてしまおうかと思ったけど、別に俺たちは付き合っていたわけでもないんだし、そのままで心地よかったし、変える必要も特になかった。


いつものように俺が、部屋でぼーっとしているときだった。


「びっくりした…」


思わず、俺の声が漏れた。


それは――開くはずのないドアが開いたからだった。


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