笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


可笑しいとか、変だとか、もちろん思わなかった。


俺だって、正反対だけど――同じだったから。


「…生まれつき、笑えなくて、嬉しくても、楽しくても、笑えなくて」


依美の言葉は、確かなものだった。


俺と、同じで。


いろいろな言葉を返したくて、いろいろな感情が溢れそうで、とにかく、落ち着けなかった。


こんな人と出会えるなんて、思ってもいなかった。


大げさかもしれないけど、――奇跡だと。

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