笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
その日、依美が部屋を出て行ったあとも、俺は一人で紅茶を飲みながら考えていた。
何故、依美がこのドアを開けられたのか。
俺と彩菜が一緒にいた1年間の間、本当に誰も開けたことがない。
それは偶然だったのか?
誰も開けようとしなかっただけで、誰かが開けようとすれば誰でも開けられたものだったのか?
俺たちと、依美が共通の鍵を持っていたわけでもないのに、何故だ。
俺の脳がそこまで考えたとき。
「まさか…」
その“共通の鍵”という言葉がキーワードになって、俺は何かをひらめいたような気がした。