笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
だから。
奏の言っていることは理解できても、想像ができなかった。
どんなに冷たい人なのだろう。
そして、そうやって接されることは、どんなに苦しいことなのだろう。
「だから俺、こう見えて料理は得意なんだよ」
一般的な家庭では、母親が家事をするだろう。
もちろん料理だって、母親の役目だろう。
でも、奏の家では違うんだ。
母親が料理をしないから――奏がするしかなかったんだ。