笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
今年も、きっと家族にしか言ってもらうことがないだろう。
“誕生日、おめでとう”――。
そしてその言葉に笑顔を返せない私は、また窮屈な想いをすることになるのだろうか。
鏡の前に立ち、胸元にチェック柄の制服のリボンを付けると、決して上がらない口角をジッと見つめる。
笑えないことは知っているけど。
偶然、笑えるときを、そのタイミングを、私は探しているのかもしれないと思う。
笑えないと知っていても、もしかしたら。
もしかしたら笑えるのは、今日かもしれないと、少しだけ期待を寄せているのかもしれない。